京都には、観光都市ならではの道の特性やお客様との接し方など、他の地域とは異なるポイントもあります。ここでは、洛陽交運のベテランドライバーのインタビューをもとに、タクシードライバーに向いている人の特徴と、京都で働くうえで求められる姿勢をひもときます。
20代で洛陽交運に入社した後、大型ダンプの親方を経て2011年に再び同社へ。現在も京都の街を走り続けるベテランドライバーです。「一歩外に出たらライバル」とプロの厳しさを伝えつつ、営業所では親身に相談に乗るなど、厳しくも温かい姿勢で新人の独り立ちを見守っています。
車の運転が好きで、長時間の運転でも苦にならない人は向いていると思います。
運転技術も、最初から完璧である必要はないと思います。タクシーはプライベートの運転と比べて車線変更が多く、まっすぐ走る場面が少ないので、最初は戸惑う方もいます。ただ、経験を重ねるうちに慣れていくものです。

未経験から入社した人と話すと、「思っていた以上に覚えることが多い」という声を聞くことがあります。
最初の壁になるのは道を覚えることです。京都の道は複雑ですが、まずは縦と横の幹線道路を頭に入れるところから始めます。わらべ歌の「丸竹夷(まるたけえびす)」で通りの名前と順番を覚え、そこから細い道や一方通行の方向へと、段階的に広げていきます。
道以外にも、車載メーターの操作や日報の書き方など、最初は戸惑うかもしれませんが、マニュアルもありますし、一度に詰め込むのではなく、日々の業務の中で少しずつ覚えていけば、自然と慣れていくと思います。
お客様との接し方は、向き不向きが分かれる部分かもしれません。私は自分からお客様に話しかけることはしません。静かに過ごしたい方もいらっしゃるからです。
ただ、お客様のほうから話題を振られたときは、その話を広げて返すようにしています。例えば野球の話でも、阪神ファンの方なら阪神の話をしますし、巨人ファンであれば巨人の話に合わせます。
相手に合わせて自然に対応できるかどうか。それが、この仕事を長く続けるうえで大切なことだと思っています。
京都では、住所ではなく、南北と東西の通り名を組み合わせて行き先を伝えられることが多いです。例えば「○○通と△△通が交わるところまで」と言われて、そこから「少し上がって」「東に入って」と続きます。
また、京都では北へ向かうことを「上がる」、南へ向かうことを「下がる」と表現します。こういった表現や文化は覚えておくと良いですね。
京都は観光都市ですので、海外からのお客様も多くいらっしゃいます。言葉の面では翻訳アプリを使いながら対応しています。観光スポットまでの最短ルートや、混雑を避けた道を把握しておくことも大切です。
道を覚えたその先の段階ですが、お客様に応え続けるためには、日々の情報収集も欠かせないと思います。
京都は神社仏閣が多く、年間を通して観光需要があります。5月の葵祭、7月の祇園祭、8月の大文字の送り火、10月の時代祭と、季節ごとに大きな行事が続き、それを目的に来られるお客様もいます。
繁忙期になると、街中でタクシーを求めるお客様が増え、無線も多く入るようになります。そうした需要があることは、京都で働くうえでの強みだと思います。
入社して間もない時期は、思うように売上がつくれず、壁を感じることもあります。
私の場合ですが、まずは自分の核になるルートや走り方を見つけることが大事ですね。それが固まってくると、曜日や時間帯、天候に応じて調整ができるようになり、少しずつ売上にもつながっていくと思います。
この仕事は収入に波が生まれることがあります。繁忙期はお客様を見つけやすく、経験の浅い方でも一定の売上を確保しやすい時期があります。一方で、閑散期にどう動くかで差が生まれていきます。
「周囲の空車を見て走る道を選ぶ」「天候や曜日に応じて場所を変える」といった判断は、こうした時期に活きてきます。忙しい時期に頼らず、自分なりの動き方を持てるかどうかが、長く続けていくうえでのポイントだと思います。

ワンメーターのご乗車でも、その先で次の仕事につながることがあります。目の前の一人ひとりのお客様を大切にできるかどうか。それも、この仕事に向いている人に共通する姿勢ですし、そうすることで見えてくる面白さがあると思います。
極端な言い方ですが、「ぼーっと走らない」ことです。前に空車のタクシーがいれば、お客様はそちらに乗りやすい。だから信号ひとつ分でも間隔を空けて、自分が先頭に出る。そういう感覚は、続けているうちに自然と身についてきます。
信号待ちの間も、右から何台、左から何台の空車が通り過ぎたかを見ています。空車が向かった方向をそのまま追いかけるのではなく、別のルートを選ぶこともあります。周囲の状況を見ながら、自分の走る道を決めていくことは意識してほしいですね。
私の場合、曜日や時間帯、天候によって走る場所を変えています。例えば、土日は人が動き出す時間が遅いので、平日と同じ感覚では走りません。逆に平日の朝は通勤でお客様が集中するので、早い時間から動くこともあります。
タクシーの繁閑は天候の影響も受けることがあります。特に変わりやすいのは雨の日です。朝から降っている日は傘を持って出かける人が多いですが、途中から雨が降り出した場合、傘を持たない観光のお客様が一気に増えることがあります。天気予報を毎日確認するのも、自然と習慣になりました。

自分で走りながらお客様を見つける流しの営業とは違い、無線の場合はお客様のほうから仕事が入ってきます。乗車の機会が増えるわけですから、活用してほしいと思います。
新人のうちは緊張するかもしれませんが、場数を踏むことで対応力は身につきます。無線を積極的に受けることは収入にもつながりやすいので、なるべく恐れずに受けるようにしてほしいですね。
勤務は2車3人制で、2日勤務して1日休みのサイクルが基本です。長時間の乗務のあとも休みがあるので、体力の調整はしやすいと思います。1台の車を占有でき、出勤時間も自由なので、引き継ぎを気にせず、自分のペースで出庫・入庫できる点も特徴です。
新人が壁にぶつかったとき、私はあえて「頑張れ」とは言わないようにしています。壁を感じている方にとって、その言葉がプレッシャーになってしまうことがあるからです。
教習を終えて会社を一歩出れば、新人もベテランも同じライバルです。ただ、会社に戻れば先輩に相談できる空気はあります。「今日こんなことがあった」という話にはきちんと耳を傾け、求められればアドバイスもできる限りしています。そうした日々のやりとりの積み重ねで、少しずつ力がついていくのだと思います。
ひとつ、今も忘れられない出来事があります。20代で初めて洛陽交運に入社した頃、独り立ち初日に最初のお客様を乗せたときのことです。
「今日が初めての乗務で、お客様の第1号です」と伝えたところ、とても喜んでくださり、「頑張りや」と声をかけてくださいました。最初に乗せたお客様の印象は、その後の仕事への向き合い方に影響するものです。私の場合は幸いにも温かい言葉をいただけたことが、今日まで走り続ける支えのひとつになっています。
洛陽交運には、京都のことを知り尽くした先輩ドライバーがいます。観光タクシーを主な業務とされている方で、お客様に満足していただくために、感動していただくためにどうしたらいいか工夫されていて、長い経験を持つ方が京都のことを今でも調べ続けている姿には、素直に敬意を感じます。

最近はお客様自身がインターネットで事前に多くの情報を調べて来られるため、ドライバー側の知識が追いつかない場面もあるでしょう。だからこそ、日々のインプットを続けることが大切だと思います。
京都という街の奥深さを知るほど、仕事の幅が広がっていく。それもまた、この仕事の魅力だと感じています。
1949年創業の洛陽交運は、京都でタクシー事業を展開するヤサカグループの一社です。ヤサカグループの一翼を担う存在として、勤務体制や社内設備を整えながら、京都でタクシー事業を続けてきました。京都市民からは「ラクヨー」と呼ばれ、地域に根付いた存在として長きにわたり親しまれています。
また、ドライバーが無理なく仕事を続けられるよう「2車3人制」などの勤務体制を導入し、働き方の工夫を行っています。実際に、異業種から転職して現在ベテランドライバーとして活躍している社員も在籍しています。
※2026年4月調査時点
| 職種 |
タクシードライバー
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|---|---|
| 雇用形態 |
正社員
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| 本社所在地 アクセス |
京都市南区西九条森本町65
近鉄京都線「十条駅」より徒歩1分
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| 勤務地 |
京都市域全般
長岡京市、宇治市、京田辺市、木津川市など
周辺地域を含む |
| 出勤時間 |
5:00~15:00までの自由出社
出庫時より10時間・休憩1時間30分を含む
※最大14時間勤務可能 |
| 休日 |
月10~11日(シフト制、2勤1休)
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| 必要資格 |
普通免許(1年以上)
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京都は、季節や時間帯によって人の流れが変わる街です。変化を楽しみ、前向きに取り組める方ほど、この仕事の面白さを感じやすいでしょう。